〔相談内容〕
相談者のMさん(50代)は、体調を崩して入院している両親が施設に入所することになったため、空き家となる実家のことや、今後の施設利用料の支払いについて不安がありました。
実家の名義はお父様だが、そのお父様も最近、年齢的なこともあってか物忘れが多くなってきていたようで、「父が認知症になる前の対策として、『家族信託』という手続きがあると聞いたのですが・・・」とういことで詳しくお話を聞きたいとのことでした。
〔何も対策しないと〕
お父様が認知症となり、施設利用料を捻出するため実家を売却しようにも、お父様に判断能力がないため、スムーズに実家売却を進めることができず、実家売却のため成年後見制度を利用することになります。
Mさん自身が成年後見人に就任したとしても、お父様が亡くなるまで職務(家庭裁判所の監督下で報告義務を課せられる)が続くことになり、専門職後見人(弁護士、司法書士等)が就任した場合には、その後見人への報酬(月2~3万円)が必要となります。
Mさんは成年後見制度の趣旨も理解した上で、上記の事情であれば可能な限り成年後見制度の利用は避けたいと判断されました。
〔家族信託による解決方法〕
実家の所有者であるお父様を「委託者兼受益者」、お母様を「第二受益者」、ご相談者であるMさんを「受託者」とする家族信託契約をお父様が認知症となる前に締結します。
もし、お父様が認知症等で判断能力が低下してしまっても、Mさんが施設利用料の支払い等のため、すぐに実家を売却することができます。
売却代金はそのまま信託財産となるため、お父様やお母様(扶養義務の範囲内で)の生活費や施設利用料等のために使用し、お父様が亡くなった後もお母様のために継続して使用することができます。
この家族信託契約により、成年後見制度を利用することなく、ご家族みんなが安心して過ごしていただくことができます。